なぞの星の怪獣ダギゴン

中共軍が、空からの水爆実験に成功したというニュースは、人々の心をくらくしていた。 
「これでもし、中共がソ連と戦争をはじめ、あの水爆でも使ったら、日本は死の灰で、ひどいめにあってしまう。」
人々が、あつまるとそんな話をしていたある日、ラジオとテレビがニュース速報を伝えた。
「アメリカの原子力研究所の発表によりますと、中京は数時間前に、またも新しい実験を行ったもようです。 キャッチした震度によると、こんどのものは前回のものの、十数倍の強さをもっているようですが、それがどんな性質のものか、わかりません。」
だが、このニュース速報は、それから二十分後、中京の国営放送によって訂正され、おそるべきニュースとなって、人々をふるえあがらせた。
なんと、世界の宇宙科学者が、空想の宇宙怪獣として発表していたなぞの星の怪獣ギドンが、中京の水爆実験所をおそっていたのだ。

チェン博士をキャップとする、中共の水爆実験グループが世界最強の威力をもつ水爆を、地下二百五十メートルの倉庫で調べているときだった。
緊急合図のブザーがなった。

「どうしたのだ?」
リー博士は、手近の電話をとりあげ、地上の司令官に聞いた。
「それが…ふしぎな物体が、この実験場めがけてとんできているのです。 レーダーにはなんの反応もないのですが…。」
「特殊光線レーダー「ホン8号」を使って見たのか?」
「使いました。 でも、反応はないのです。 とにかく、博士たちは、ひとまず『39号』へ退避していてください。」
「よし、わかった。」
リー博士は、電話をきると、司令官の意向を、チェン博士たちに伝え、『39号』へ車で退避した。 そこは、どんなきょうりょくな爆発にあっても、びくともしないように作られている待避所だ。

「か、怪獣だっ。」
地ひびきをたてて、実験場におりてきたなぞの物体を見たとき、司令官たちは、きもをひやしてしまった。

それは、身長が20メートルあまり、全身が青銅色のうろこにおおわれ、二本のうしろ足で立ち、四本の手をもち、首が二つ、頭が二つのぶきみな怪獣だった。
とびでた大きな目玉をぎょろつかせ、なにかをあさりだした怪獣は、実験場のものをかたっぱしからこわしはじめた。

「撃てっ!」
司令官は、ロケット砲など、あらゆる兵器を使って、怪獣を攻めたが−。

「あ、あっ!」
数発の大型ロケット弾をうけて、怪獣の胴がやぶれ、みどり色の”血”があふれでたが、それはすぐかたまり、やがてそれが、もう一つの頭となり、首となったのだ…。
「しかたがない、こうなったらV3光線弾を使って、退治してやる。」
V3光線弾、それは、デェン博士たちが世界にさきがけて研究完成したもので、月でもその光線を30秒あてると爆発してしまうおそろしいものだった。

「なに、博士の許可がなくてはだめ?」
V3基地司令官は、チェン博士、または北京の命令がないと撃てないといってきた。
「博士、チェン博士をねがいます。」
司令官は、『39号』へ電話をし、チェン博士に、怪獣のようすをはなし、V3の使用を許可するようたのんだ。

「司令官、それはいけない。 その怪獣はきっとダギゴンだ。 あいつにV3を使ったら、もっと大へんなことになる。 あの怪獣は、死ぬしゅんかんに、数十万度の光熱をだすのだ。 もし、そうなったら,この地下の水爆が爆発してしまうぞっ。」

司令官は、しかたなく電話をきった。 だが、怪獣ダギゴンがあばれまわり、実験場の設備を破壊し、あたり一面を火の海にしているのを見て、
「チェン博士も同意した。 V3で怪獣をやっつけてくれ。」
司令官はうそをいってしまった。 実験場がめちゃくちゃになれば、それはかれの責任だし、国の財産の損失だ。 それにあのV3でふきとばせば、怪獣が光線をだすひまなとないと考えたからだ。
司令官の大へんなあやまりであったことがわかった。

V3光線をうけた怪獣は、ふきとばなかった。 とけるようにくずれた。 そして、チェン博士のおそれた強力な光熱を地下に向けてだしたのだ。

ガガガーン!
すべては、その大音響と、天地をゆるがす地ひびきでおわってしまった。
水爆実験場も、基地も、250メートルの地下も、すべてがいっしゅんにして消えてしまった。
あとにはただ、熱くやけた砂の海がのこっただけだった。